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Odyssey

タイ・ビルマ出張記2010 その10 邂逅

 初めて訪れたその村は見渡すかぎりの水田と小さな集落が点在するだけの牧歌的なところだった。 この村には多くのラタン工房があり、そのうち十数件が我々の製品を作ってくれている。 いずれも質の高い製品を作ることができる特別な工房である。
 とはいえ彼らの本業はあくまで農家。 僕が村を訪ねたこの時期は雨期で田植えシーズンの最終盤にあたり、多くの人々がまだ本業に従事しているため、工房でラタン製品の製作に携わっている人はわずか。 それでも最初に訪ねた工房ではちょうど我々のオーダー分を製作中であった。 僕が村に行ったのは7月27日だが、8月の第一週にはヤンゴン港を出る船に載せなきゃならないのにまだここで作っていて間に合うのか少々不安になったので確認してみると「もちろん大丈夫」という返事。 半分だけ信じておくことにする。

 働いている人の多くは若い女性だが、その理由を尋ねると、こうして終日座ってやるような仕事は女性が向いていて、男性はムラッ気が多いので務まらないのだと。 確かにタイでもシルクの織工はみな女性だし、やはり編み物系の仕事は男性より女性のほうが上手にこなすのだろう。 また、あくまで一般論だが、現在そしてかつて社会主義体制下にあった国ではたいてい女性のほうが働き者である。 社会主義のもとでの男性の唯一の仕事は堕落することだ。

 次に訪ねた工房はこんな感じ。 どこの工房も竹でできた高床式の小屋で質素な造り。 一番手前を左方向に歩いているのがこの一家の大黒柱で、編まれた製品はさすがに丁寧に作られていた。

 次の工房は我々のアイテムではなくフランスのサプライヤー向けのアイテムを作っているところで、僕はメーカーのスタッフに付き合って中に入ったに過ぎなかったのだが、食事をすすめられた。 地元産の三種の煮豆、胡麻、お茶の葉をペースト状にしたものをオイルに漬けたもので、試しにちょっといただいたら本当に美味しくてガンガン食ってしまった。 考えたら早朝6時ごろに少しの朝食を食べただけだったのですっかり空腹だった。 ただ、昼飯というよりビールのつまみにもってこいって感じの味。

 その後もいくつかの工房を見て回り、最後に訪れた工房は自宅を兼ねた二階建ての家だった。 これまで見てきたのはいずれも簡素な作業所といったものだったがここは立派な家。 竹で網代に編まれた工房の床は弾性の低いトランポリンみたいな柔軟さで、素足で歩くと本当に気持ちがいい。

 ここでは家人が我々のために昼食を準備してくれていた。 当然のことながら主食は米。 丸い座卓の上には数種類のおかず。 海老の揚げ物、鶏肉の煮物、野菜炒め、煮豆、正体不明の辛い漬物、野菜スープ。 どれも本当に美味しく、米の炊き具合も絶妙でご飯がすすむ。 こういうもてなしにはつくづく弱い。 座卓の下は猫の昼寝の場所だった。

 ここには犬もいた。 この犬、どこか僕がガキの頃に家で飼っていたチビという犬の面影があって初対面という感じがしない。 それは犬の方も同じようだった。 目が合うとすぐに擦り寄ってくる。 しかも僕がこの工房の周囲を散歩し、けっこう遠くまで歩いてきてしまった時には小走りで迎えに来てくれたのだった。 頭を撫でた時の懐かしい感触。 その時やはりこの犬の前々々世?はうちのチビだったのだと理解した。
 九州は福岡とビルマの農村で時を超えてふたたび巡りあった輪廻の不思議。 僕がここに来ることは運命づけられていたのだった。

 単なる思い込みだと思いますが。

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