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Sounds Good

西中洲の夜

 16年ぶりに会った旧友は当時と何ら変わっていなかった。 というより学生時代そのままだった。 同級生の多くが顔に幾筋かの皺を刻み、やや量の減った頭髪には白いものが混じり、下腹部には醜い脂肪を抱え、仕草にはどこか中年の憂いを帯びるような年齢になったというのに、である。 もっとも、彼の方も僕に「変わらんねー」と声をかけてくれた。 こちらの方はお世辞に違いない。 老いについては自覚しているつもりだ。
 そんなY君に、かつて東京にいたカメラマンのK君も加わって三人で飲んだ。 天神大丸の裏にある老舗ジャズクラブ「New Combo」の近くにある餃子屋。 博多っていうのはとにかく何処に行っても食い物が美味くて困る。 今回の出張でも連日の酒宴で体重が1キロ増えた。 日常、東京ではほとんど飲みに行かない僕。 出張中、日常業務はお休みだが、胃と肝臓にだけは連日過酷なまでの超過労働を課している。
 やはり16年も会っていないとお互いの身辺にも様々な出来事がある。 その時間の空白は焼酎と餃子とホルモンの力を借りてもそう易々と埋まるものではないが、言葉を交わすごとにしばらく手を掛けることもなかった記憶の扉が開くような感じで、ひとつ思い出すごとに連鎖反応が起き、次々にパズルのピースがあるべきところにはまっていく。
 Y君は大学卒業と同時に就職したインテリア関係の会社で今も働きながら、数年前からCMなどの音楽制作の仕事も始めたという。 学生時代にロックバンドをやっていた彼にとってはこちらの方が「らしい」仕事。 そんなY君が次に連れて行ってくれたのは西中洲にあるバー。 ただ、既に開店の時刻をとうに過ぎているというのにバーの扉には鍵がかかったまま。 仕方なく小雨がそぼ降るなか通りのベンチで待っているとマスターが自転車で登場。 ふたたび雑居ビルの階段を上り開店と同時にまだ暗闇の中にうっすらと浮かび上がったバーカウンターに取りつく。
 今夜二度目の乾杯の直後、背中のドアが開き若者数人の客が来店。 開店からものの5分、バーカウンターは完全に制圧。 先日のミネちゃんのバーといい、こういうのばかり見せられるとバーという職業も悪くないと思ってしまう。
 酒も進み話に夢中になっていると、先ほどの若者のひとりがカウンターの端でギターを手にマイクに向かっている。 慌ててグラスを置き、突然始まった彼の弾き語りに耳を傾ける。 その豊かな声量、オリジナルとおぼしき楽曲の素晴らしさ、琴線に触れる歌詞、確かなギターのスキル。 続けざまに2曲聴き終わる頃にはすっかり彼の最新のファンになった自分がいた。 Y君によれば、彼は福岡ではちょいと知られたケイタクというフォークデュオのひとりで、佐賀出身のケイタ君なのだそうだ。
 すると今度はマスターのコースケさんの弾き語りが始まった。 コースケさんは東京で長くスタジオミュージシャンをやっていた経歴の持ち主で、こちらは既に円熟の域。 シングルモルトでいうなら12年とオールドボトルといった感じの二人。 こんな極上のライブが最後の夜に待っていたとは・・・。
 福岡、いや博多恐るべし、である。

バーで演ってくれたあの曲、なんていうんだろう?

あの夜のまんま。

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