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Jazz It Up !

暖炉とマリガンと焚き火

 もしも「10作以上ノジャズアルバムノ所有ハ是ヲ禁ズ」という法律が施行されたとしても必ず手元に残しておくであろうジェリー・マリガンの「NIGHT LIGHTS」。 アルバムジャケットのイラストからもわかるように当時としてはアーバン・ジャズ的なものを指向して作られたであろう作品には違いないが、僕はこのアルバムを勝手に「暖炉の前で聴くならこの一枚」と位置づけている。 個人的にもここ20年で最も聴いているジャズアルバムである。
 大ぶりだが煉瓦を積み上げただけの素朴な暖炉の前には手織りのラグ。 放射熱で人肌に温められているくたびれた皮の3人掛けソファーにウールのブランケット。 サイドテーブルにはバーボン・ウィスキーとドライフルーツ。 そして可能であれば隣には綺麗な女性。 それが無理ならグレアム・グリーン全集の一冊。 妄想はきりがない。
 実生活では寒さが厳しい地域に住んでいるわけではないので暖炉はおろか薪ストーブとも縁のない冬である。 だから暖炉や薪ストーブの優しい暖かさや見ているだけで癒される炎の効用については良く知りつつもそれを実生活に取り入れることは難しい。
 子供の頃、家の庭を掃除しては落葉や枯れ枝を燃やして焼き芋を焼いたりしたものだが、最近はダイオキシンが出るだのどうのと、その人体への影響がいかほどのものなのか科学的な裏付けもないのに五月蝿いことを言う人が増えたせいか昔と違って簡単に焚き火したりすることもままならないが、僕の場合は良き理解者に恵まれたおかげで10年ぐらい前はけっこう焚き火をする機会があった。 
 当時しばしば男二人で焚き火を囲んだものだが、人というのは炎を見ると無口になるか饒舌になるかで大きく二つに分類できるのではないかと思ったりする。 僕は前者であり、友人は後者であった。
 そんな時友人が語るのは、日頃普通に話しているような内容とは違うスピリチュアルな話だった。 思い返すとずいぶんいろんな話をしてくれたと思うけれど、それが何の話だったのか今はさっぱり覚えていない。 彼は僕の方など見向きもせず、ゆらめく炎に向かって何か自己暗示でもかけているかのように陶然と語り続ける。 僕はと言えば、彼の言葉に相槌を打つでもなく、ただただ無言で炎を見つめていた。
 経済活動に忙殺され人間性を喪失しがちな現代人にあって、焚き火の時間というのは非常に重要なのではないか。 我々の文明は火を自在に操ることから始まった。 世の中パワースポット流行りでそこらじゅうにそうした場所が溢れているが、そもそもただそこに行っただけで力がみなぎるような場所なんてそんなにたくさんあるはずもなく、そんな「迷信」に振り回されていたずらに他力本願力を磨くよりもむしろ火という物質の原初的なパワーを活用し、それを媒介にして自らの内面、心の在りようを覗き見てみる方がよっぽど人間らしいと思う。
 人間には本質的に焚き火が必要なのだ。

GERRY MULLIGAN – NIGHT LIGHTS (Mercury/1963)

Side-A
1. Night Lights
2. Morning Of The Carnival From ‘Black Orpheus’
3. In The Wee Small Hours Of The Morning
Side-B
1. Prelude In E Minor
2. Festival Minor
3. Tell Me When

・Gerry Mulligan – baritone sax, piano
・Art Farmer – trumpet, flugelhorn
・Bob Brookmeyer – trombone
・Jim Hall – guitar
・Bill Crow – bass
・Dave Baily – drums

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