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Movie

海炭市叙景


 その冬、海炭市では、造船所が縮小し、解雇されたふたりの兄妹が、なけなしの小銭を握りしめ、初日の出を見るために山に昇ったのです…。
  プラネタリウムで働く男は妻の裏切りに傷つき、燃料店の若社長は苛立ちを抑えきれず、父と折り合いの悪い息子は帰郷しても父と会おうとせず、立退きを迫られた老婆の猫はある日姿を消したのです…。
 どれも小さな、そして、どこにでもあるような出来事です。 そんな人々の間を路面電車は走り、その上に雪が降り積もります。
 誰もが、失ってしまったものの大きさを感じながら、後悔したり、涙したり、それでも生きていかなければならないのです。
 海炭市でおきたその冬の出来事は、わたしたちの物語なのかもしれません。

公式サイトより)

 この一ヶ月半というものすっかり「働くおじさん」と化し、働くことを別にすれば人間らしいことを何一つやっていなかったことに気づいた。 12月29日、午前中で仕事納めとなったその足は自然と映画館に向いていた。 他人様はどうなのか知る由もないが、僕の場合心にゆとりがないととても映画など観る気にはならない。 一年間の仕事をすべて片付けて、あとはひたすら怠惰な年末年始を迎えるばかりとなったこの日は、映画を鑑賞するには格好の日であった。
 「海炭市叙景」というまるで台湾映画のようなタイトルがこの映画を観るに至ったきっかけ。 何にせよキャッチーなタイトルって重要だ。 原作は「海炭市」というどこか無国籍な響きのする架空の都市を叙景、すなわち風景を叙述した未完の文学作品。
 今回の映画化は、叙景されて文学作品となった海炭市の風景をふたたび映像として再構成、或いは復元していく作業だったのかも知れない。 描かれているのは年の暮れを迎えた北の地方都市の日常。 五つの喪失のエピソードから成るオムニバスだが、それぞれの物語は喪失の象徴としての海炭ドック閉鎖を伝えるニュースによってシンクロする。
 年が明け、初日の出客を乗せた路面電車で交錯するそれぞれの人生。 そこには微かな再生への萌芽が描かれる。 一方で、連絡船の船内テレビが伝える一人の初日の出客の死。 原作を執筆中に自ら命を絶った佐藤泰志にとって死すらも再生の一部だったのか?
 ラストは本作品において素人とは思えない圧倒的な存在感を示した老婆役の中里あきに委ねられる。 玄関先に佇む婆さん。 そこにひょっこり帰ってきたのは行方不明だった愛猫のグレ子。 グレ子は新しい命を授かっていた・・・。 
 

映画 「海炭市叙景」 公式サイト 

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