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蹴球狂の詩

長友と宮市


 後半30分、故障明けながら圧倒的な存在感を放ったスナイデルに代わり、長友がついにネラッズーリのゲームシャツにその身を包んでサンシーロのピッチに立った。 それが現実に起こっている出来事なのだということを認識するのに時間がかかった。 しかし、こちらの錯綜した意識などお構いなしに長友はライン際を駆け上がりエトーに名刺がわりの低いクロスを送った。 現実なのだ。 それはこの時間まで睡魔と戦い続けたか、或いは早起きした者のみにもたらされた至福の瞬間でもあった。
 驚くべきことに長友はサンシーロの大観衆の前でも「普通に」プレーした。 相手が一人少なくなっていたこともあり、右サイドバックのマイコンが上がりを極力抑えて中に絞って3バック気味にし、長友が高い位置に張る局面もあった。 事実上の「長友お披露目タイム」。 カンビアッソやエトーとの連係は初の実戦とは思えないほど。
 長友は使われるタイプの選手。 だからレベルの高い使い手に恵まれれば水を得た魚のようにピッチを駆け回る。 長友がインテルという強豪でプレーすることで、我々は彼がこれまで見せることができなかったレベルのプレーを目撃することになるだろうし、またそうあって欲しい。

 宮市は以前からYouTube上の存在として知っていた。 最初のプロ契約がアーセナルというのも規格外だが、なんといってもアーセナルにはかつて「入団テストで衝撃5発」の伊藤翔の例があるので経過を慎重に見ていたのだが、例のプレミアの労働ビザの関係でフェイエノールトにレンタルされたのだった。 ここで埋もれてしまうようなら「海外組」ではなく「海外挫折組」に名を連ねるだけだが、どうやら彼は最初のチャンスをモノにしたようだ。
 最近のエールディヴィジ(オランダ一部リーグ)はよく知らない。 アヤックスとPSVとフェイエ以外はどうってことないんだろうという程度の認識だが、宮市が入ったフェイエはなんと現在残留争いの真っ只中。 小野やカイト、ファン・ペルシーがいた頃とは隔世の感がある。 逆に言えばそんな状況はシーズン途中にレンタルで移籍してきた宮市にとって、より多くのチャンスに恵まれる可能性が高いということでもある。

 長友が使われる選手なら、宮市は自ら仕掛けてフィニッシュまで一人でもっていくことができる自己完結型の選手。 日本にはいないタイプだ。 彼のプレーの特徴である縦へのドリブル、柔らかなボールタッチ、非凡なパスセンス、そのいずれもがまだ荒削りだが、高いレベルで揉まれることでさらに磨かれていくだろう。 とりわけ縦へのドリブルの推進力は目を見張るものがある。 フィテッセとのゲームでも自らの主戦場である左サイドをほぼ制圧した。
 サイドハーフ(昔のサッカー用語でいう「ウイング」)というポジション、プロとしてのキャリアを海外でスタートさせたこと、そして何よりもそのプレースタイルが「龍時」を彷彿とさせる。 龍時はかつてアトレチコ・マドリーの下部組織にいた玉乃淳をモデルに書かれた物語だが、作者である野沢尚の自殺により、オリンピック日本代表に招集された龍時が奮闘するところで終わっている。
 龍時の物語の続きを現実の世界で見せてくれそうな宮市。 かつて多くの未来ある若者を褒め殺し、結果としてその芽を摘んできた逆神キムコが宮市を激賞したりしないように祈る毎日である。 心からそっとしておいて欲しい。
 

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