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Critique

テレビが発する放射能


 あの日以来、多くのものが変わった。
 しかし、個人的にはつとめて普通に暮らそうと努力している。 「努力している」ってところが普通じゃないのだが、それが現実である。
 一部の物品が枯渇する一方で情報は氾濫している。 今のところそれに過剰に反応するでもなく、かといって必ずしも冷静に対処できているわけでもないが、あの日から何かを大きく変えたというようなことはない。 仕事場へはクルマで通うので電車のダイヤの乱れや本数減の影響もないし、今のところ仕事場も自宅も計画停電によって電気を止められたこともない。
 知り合いの中には怪文書まがいのメールを送りつけて東京から避難した人もいる。 メールには「自分の住んでいるマンションの半分の住人(東大教授や元国家公務員の家族を含む)は先週までに避難した」とある。 それが正しいのかも知れないが、今のところ自分たちには他に行くアテもないので東京にいる。
 少し前、村上龍がニューヨーク・タイムズに寄稿したコラムが評判を呼んだそうだが、多くの一般人は東京にいることについて彼のように格好つけて御託を並べるような心情にはない。 そこに家族がいて、仕事があるから東京にいるだけだ。 彼みたいに独り身で、そのうえ物書きのように何処にいてもできる商売ならとっとと東京なんか脱出してしまう方が得策だろう。 少なくとも安全が確認されるまでは。 同じような理由で誰かが東京から避難したとして、誰がその人のことを逃亡者と呼ぶだろうか? 
 それにしても小説家というのはただ東京にいるということだけをネタにショートコラムを書いてカネを稼げるのだから楽な商売である。 しかもその文章に全米が感動したのだという。 どんな名文をしたためたのかと見てみたら、村上龍にしては珍しく好感の持てる内容ではあったが、そのどこに泣かせどころがあったのかはよくわからなかった。 アメリカ人、いやニューヨーク・タイムズの読者の涙腺の構造は理解不能である。

 危機的状況の中の希望 – Time Out Tokyo (タイムアウト東京)

 もしあの地震以降で大きく変わったことを挙げよと言われれば、それは久しぶりにテレビを見ているということだろうか。 正確にはテレビというよりNHKを見ている。 個人的安全保障上、必要に迫られて見ている。
 日に何度も会見室に現れては巧みな法廷説法で国民を欺き続ける枝野官房長官。 革マル官房長官は今後「核マル官房長官」と呼ばれることになるかも知れないが、この枝野の人気が上昇中だという。 仕事の中身は問わず、ただ一生懸命働いていれば評価されるあたりはいかにも日本人らしい。
 枝野の評価が高い?のは、同じく原発についてたびたび会見している東京電力と原子力安全保安院の会見があまりにもお粗末だからだ。 特に最初の頃の保安院の会見は無残としかいいようがなく、国民の不安を増幅させるだけの「不安院」と揶揄されていた。 そこに登場してきたのが本来原子力の専門家ではない経産官僚である西山審議官。 彼の登場によってようやく保安院の会見は安定感を獲得し、見るに堪えるようになってきた。 一方の東京電力の会見は相変わらずgdgdである。 マトモな広報ができる人間が社内にいないというのは情報開示の点では致命的だ。
 現状、原発についての情報は官邸と東電と保安院がそれぞれバラバラに発信している。 これは原子力発電を推進する立場と規制する立場の双方が均衡しながら原子力発電を運営していくという、どの国家でも採用されているシステムゆえなのだが、今回のような非常事態においては情報の出元は一元化すべきである。 枝野にしてもあれだけ記者たちの前で喋るには事前に専門家から相当なレクチャーを受けているはずで、本来ならこの非常時に官房長官が「お勉強」に時間を費やしてる暇などないはずだ。
 ただでさえそうした混乱状態なのに、この三者に新たに加わってきたのが原子力安全委員会である。 これで情報の発信元は四つに増えた。 各々がそれぞれの立場で言いたいことを言う今の状況はまさにカオスである。
 こうした状況下で複雑怪奇な情報を噛み砕き、整理して伝える役目を負わされているのが各局に出ている原子力の専門家や記者たちである。 NHKの場合、山崎記者と水野解説委員の二人が交互に出てきて解説しているが、重大な事象が発生しても極力オブラートに包んで伝えようとする山崎記者に対して水野記者はヤバいことはヤバいとハッキリ言う。 誰もが疑心暗鬼に陥っている時に山崎記者のような言い方をされると余計ヤバいのかなと思ってしまうもの。 そこへいくと水野解説委員の的確な情報発信は視聴者にとって判断の大きな助けになっていると思う。
 子供の頃、僕がテレビに近づき過ぎて見ている時にそれを叱るばあちゃんの口癖は「テレビは放射能が出ようとばい!」だった。 もし水野解説委員の口から「東京から離れるべきだ」という言葉が聞かれたら、その時は全力で東京から避難する時だと思う。

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