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Odyssey

岩手の旅 復興支援編 その4 最終日

 いよいよ今回の活動の最終日。 初日が大槌町で二日目が陸前高田だったので、最終日のこの日は釜石に行こうと考えていたが、釜石の募集人数は少なく、既にほぼ予約で一杯になっていたので大槌町に行くことにした。
 大槌町に向かうバスは満員で、昨日から遠野を拠点に復興支援活動に参加しているキリスト教団体「CRASH Japan」がチャーターしているバスに便乗させてもらった(「CRASH」はChristian, Relief, Assistance, Support, Hopeの頭文字をとったもの)。 補助席にようやく座れるぐらいの超満席である。 隣り合わせた女性が名札にカタカナで「チュラポーン」と書いていたのでタイ人かと思い訊いてみるとアメリカから来たのだという。 元々はラオス出身なのだがベトナム戦争の際に家族でアメリカに亡命したのだと話してくれた。 日本は今回が初めてで、このバスの中にいるメンバーはそれぞれ台湾、香港、フィリピン、インドネシアから来ているのだという。 メンバーの中に一人だけ日本在住3年という日本語ペラペラのオージーがいて、彼が現地コーディネーター役のようだ。 「さしずめエイジアン・チームだね。 遠くから日本に来てくれたあなたたちの支援に本当に感謝します」と、日本人を代表して謝辞を述べたら、「今回の震災、そして原発の被害については私たちも本当に心を痛めているの。 だからこれは特別なことではないわ」と言う。
 カリフォルニアにあるクリスチャン・カレッジの職員をしているという彼女。 かつてはラオスにいた彼女は当然仏教徒だったわけで、その彼女がアメリカに渡りクリスチャンに改宗するに至るにはどんな経緯があったのか気になったのでストレートに質問をぶつけてみたら、どうやらその問いは彼女にとって相当ツボに入るものだったようで、改宗のきっかけとなった神秘体験から精神世界の話までけっこう前のめりで話してくれた。 たぶん彼女も宣教師の一人なのだろう。 今でも家族に会うため年に1回はラオスに帰っているのだという。
 この日の作業は被災したお寺「蓮乗寺」の墓参ルートの整備である。 この蓮乗寺は津波の際流されてきたガスボンベが引火して本堂が消失してしまったそうである。 ネットで見る被災直後の画像から比べれば現在はほとんどの瓦礫が撤去されてはいるものの、いまだ倒れたままの墓石や、神仏習合の寺だったのか無残に根元から折れて鉄筋が剥きだしになっている鳥居の残骸もある。
 墓参ルートの整備が急がれるのは言うまでもなく初盆が近いからである。 基本的に共用スペースの草取りやゴミ拾いが中心だが、住職の許可を得て檀家さんの区画の中の草取りや清掃も行った。 なかにはこのまま無縁仏になってしまうお墓もあるのではないだろうか。 そんなことを考えながらみな黙々と作業をする。 夏休みを利用して北海道は名寄から来たというボーイスカウトのグループのなかには家族単位で参加している人たちもいた。 午後には他の現場を終えたCRASH Japanのメンバーも加わり、蓮乗寺の作業ははかどった。 このぶんなら檀家の皆さんも無事お盆を迎えることができるのではないだろうか。
 ボランティアとして現場に入って三日間活動したわけだが、震災から5ヶ月近くが経過し、釜石も大槌も陸前高田も既に被災直後とは様相を異にし、道も整備され、街を埋め尽くしていた瓦礫も仮置き場に集められ、一見整然としている。 既にその場所には死の匂いはない。 絶え間なく動く重機と行き交うダンプの音を除けば、そこには奇妙な静けさがあるだけだ。 だから我々はその場所で多くの尊い命が失われたことをついつい忘れがちにになる。 我々が拾った瓦礫は被災者の生活のかけらであり、そこにはかつて人々の暮らしがあった。 これからボランティアとして現地に入る人たちに伝えたいのは、現場に立ったその時に、今は単なる地面でしかないそこに土足で立ち入る前に、死者に敬意を払って欲しいということ。 お昼にお握りを食べているその場所がかつてどんな場所だったかに思いを致すことである。 自戒を込めて。
 
つづく
 

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