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Odyssey

欧州蹴球競馬旅 Episode 10 Zingaro Calacas

                Zingaro Loungta 【YouTube】
                Zingaro Battuta 【YouTube】

 今回わざわざロンドンからパリに来たのは騎馬オペラ「Zingaro (ジンガロ)」の新作をいち早く観るため。 旅のテーマである競馬ではないが、馬が走るのを観る点では同じである(やや強引)。 僕は初来日の時の「Loungta (ルンタ)」、妻は二度目の来日公演の「Battuta (バトゥータ)」も観ている。 新作は「CALACAS (カラカス)」。 鬼才バルタバスが今度はどのようなイマジネーションを見せてくれるのか? おりしもこの11月2日から新作がお披露目されており、その翌日に観劇することになった僕らはもしかしたら日本人としては最初に新作を観る幸運に恵まれたのかも知れない、などと妄想を膨らませる(以降ネタバレあり)
 夕刻、メトロでパリ郊外のFort d’Aubervilliers (フォール・ドーベルヴィリエ)駅を目指す。 そこにジンガロの常設劇場があるのだ。 地上に出てみると、ジンガロの劇場以外には特に何があるという場所でもなさそうな感じ。 もっとも夜なのでよくはわからない。
 劇場の手前にはレストランがあり、開演の1時間半前から営業している。 中にはこれまでのジンガロの演目で使われたコスチュームやアクセサリー、写真などが所狭しと展示されており見る者を飽きさせない。 開演前は軽食とドリンク、終演後はディナーを楽しむことができる。 開演前はとても混雑するのでここで食事をするつもりなら早めに行くことを薦める。 公演のパンフレットなどもここで売られている。
 ジンガロはサーカスにその原型がある。 馬が主役となる性質上、劇場の中央に円形馬場は欠かせない。 その周囲を360度取り囲む擂り鉢状の客席のつくりも「ルンタ」の時と同じだ。 しかし今回はその擂り鉢状の客席最上段の上をぐるっと一周するサークル状の通路の幅がやたらと広かった。 下が土なのはルンタの時に演者たちが五体投地を繰り返していた通路もそうだったが・・・・・その時抱いた感じが胸騒ぎに変わる前に、着座した僕たち観客の視線は前方の円形馬場に注がれ、暗闇の中うっすらと浮かび上がるしゃれこうべの奇怪さに心を奪われる。 誰もが後方の通路に多くの注意を払うことはない。 するとそこに4人の大道芸人の姿が浮かび上がる。


 一見するとアルゼンチンの牧童「ガウチョ」を思わすようないでたちの彼ら。 しかし彼らは背中に大きなバスドラムを背負っている。 ドラムの上にはシンバル、両手のマレットが背中のドラムの両側をリズミカルに打ちつける。 一見タップを刻むかのような足の動き。 そこにはリードが結ばれていて巧みにシンバルを操っている。 そのままクルクルとコマのように回りながらアクロバティックな踊りとリズムは最高潮に達する。 後でわかったことだが、それがチリを代表する大道芸「Chinchinero (チンチネロ)」であった。 YouTubeでジンガロでのチンチネロに一番近いものを探して上に貼ってみたが、実際のパフォーマンスはこれとは比較にならないほど素晴らしかった。
 ジンガロは端的に言えば馬の曲乗りと音楽のコラボレーションである。 ルンタではチベット僧の読経と声楽、バトゥータではジプシー楽団、そしてこのカラカスではチンチネロら大道芸人たちの打楽器がストーリーに彩りを添える。 しかしながら本来は主役の馬たちに対してどちらかといえば脇役であるはずのこのチンチネロは実に鮮烈な印象を残した。 今になって思うのは、このチンチネロをもう一度観るためだけにジンガロに行っても構わないということである。 まさに主役の馬を食う圧巻のパフォーマンスだった。
 やがて場内が暗転すると、今度は観客席後方のサークル状の通路に馬が現れてギャロップで駆け回る。 やはりそこは馬場だったのだ! 馬の数は2頭、3頭、4頭とどんどん増えていく。 なかには馬車を曳くものもいる。 馬たちが飛ばした土埃が観客に頭上から降ってくる。 そうかと思えば前方の円形馬場ではワイヤーアクションを駆使した曲乗りが始まる。 この時観客たちは中央で小さな円を描く馬たちと外側で大きな円を描く馬たちの中間に置かれ、自分たちがいきなり馬場の真ん中に放り込まれたような気分にさせられる。 まるで自分がちびくろサンボの虎になった心境。 いたずら好きのバルタバスらしいギミックだ。
 人間、死にそうな目にあった時なんかによく「これまでのことが走馬燈のように浮かんで・・・」なんて言うものだが、そのくせほとんどの人間は実際の走馬燈など目にしたことがないだろうと僕は思う。 しかし、この先誰かに「実際の走馬燈を見たことがあるか?」と訊かれれば、僕は「見たことはないが中に入ったことはある」と答えるだろう。 バルタバスがパリの郊外に創り上げたカラカスの舞台はまさに巨大な走馬燈と言うべきものだ。
 ジンガロの新作「カラカス」。 プレスリリースによれば2013年か2014年あたりに来日公演が計画されているという。 そんなに先まで待ってられるか!という方は今すぐパリに行って下さい。

 
http://www.bartabas.fr/
ジンガロ、騎馬芸術、チベットからのメッセージ。

つづく

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