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Odyssey

岩手の旅 2012春 活動所感

 夜行バスに乗ってしまえば池袋と遠野はドア・トゥ・ドアで繋がるので意識しづらいが、遠野という地名が示すようにここは元来人里離れた土地である。 活動の最終日、大槌町から帰る途中このあたりは猛烈な吹雪となった。 今年の冬の長さは例年以上だが、4月になっても普通に吹雪くこの地の寒さ。 昨年大震災で被災した人々がその直後にどれだけ厳しい時期を送ったかをあらためて実感させられた。
 今回遠野に行って昨夏に見たいくつかの顔との再会した。 同じ8月1日から遠野に入った男性はそのままずっと遠野にいたのだという。 もっとも途中数週間は地元に帰ったりしたらしいが、基本的にずっとここで活動していたらしい。 思わず「仕事は大丈夫なんですか?」と訊きたくなるが、ここでは言わぬが花である。 無論余裕がなければこうした活動に長期間身を投じることなどできるはずもない。
 また、毎夕の全体ミーティングの場で参加者を戒める意味で訓話めいたものを話す男性は昨年7月に遠野に来て以来9ヶ月間活動を続けているという。 その話のなかで何度も「被災者を第一に考えろ」と言う男性。 毎夕彼の話を聞いていて正直気持ちがどんよりした。 もちろんそれだけ長期間継続して活動することなどなかなかできることではない。 ただ、エブリバディズ・ウェルカムでとてもオープンでありながら大部屋にはテレビの1台すらないこの施設で長期間に渡って活動を続けることが被災地に寄り添う一方で、確実に「震災後」或いは「脱震災」にシフトしつつある非被災地域や一般社会との間に溝をつくってはいないだろうかという疑問も感じた。
 震災から一年が過ぎ、現地入りするボランティアたちの動機や意識も昨年のそれとは少し違ってきているように思う。 昨夏にくらべてボランティアのプロみたいな人が増えた印象。 発足当初の良い意味でも悪い意味でもアマチュアリズムと、それがもたらしていた風通しの良さをこの先も持ち続けていってもらいたいものだが、NPO法人として認可された以上そうもいかない部分もあるのかも知れない。
 今回活動現場でボランティアリーダーが話してくれたなかに「普代村の奇跡」というエピソードがあった。 1967年に当時の村長が周囲の大反対を押し切って建造させた高さ15.5mの防潮堤と水門が今回の大津波を防ぎ、村内の住宅に一件の浸水もなく村からは一人の死者も出さなかったというもの。 これこそまさに公共事業なのだが、日頃何かと公共事業を悪者扱いしているマスコミには受けが悪かったのかほとんど取り上げられていない。

 【東日本大震災】No.61 死者ゼロ 15.5メートルの巨大防潮堤と水門が救った村 – MSN産経フォト

 今回の震災による津波の被害を受けた三陸沿岸の被災地は新たな町づくりを模索している。 自治体が自ら構想したもの、著名な建築家の提案によるものなど様々だが、報道で知るかぎりこれまでのところ必要以上に高い防潮堤を築くのはやめてほどほどのものを造り、後は避難場所やルートの整備、警報の精度の向上などとセットで人命を守るといったものが中心になっているように思える。 その根拠になっているのがギネスブックにも載っていた釜石港の水深63mの湾口防波堤でさえあの津波で破壊されてしまったこと。 つまり重厚長大な防災インフラに資本を投じるよりも住民が確実に避難できる場所とシステムを確立すべきだということなのだろう。
 釜石は今回の津波被害において我々に様々な示唆を与えた。 巨大な湾口防波堤は海の藻屑と成り果てはしたが津波の到達を数分間遅らせることで貴重な人命を救ったと考えられている。 そしてまた同市で行われてきた群馬大学教授の片田敏孝氏による防災教育が功を奏し、釜石市内では約3,000人の小中学生のほとんどが津波の被害を逃れた。 これは「釜石の奇跡」とも言われている。
 無論まずは逃げることだ。 だが新たな町づくりが目指すのは、またあのクラスの津波が来たら住民には「家はあきらめて自分は生き残れ」ということである。 今回の津波の生存者から見ればまた同じことを繰り返せということである。 自分たちがそれまでの人生で営々と築いてきたすべてを諦めて無に帰することを覚悟せよということである。 本当にそれでいいのだろうか? 我々が目指すべきは普代村ではないのか?
 もちろんすべての市や町が普代村のような方法論をとることはできないだろう。 それが可能な地理的要件もあるに違いない。 しかし、ある一定の規模以上の津波が来たらすべてを諦めて逃げろでは単なる思考停止としか思えない。 場所によっては居住地域の全面的な高台移転、そして場所によっては地形と一体化させた普代村のような防潮堤で自然の脅威に抗うこともまた自然との共生であろう。
 三陸沿岸の被災地が今後どのような町づくりのマスタープランを提示するのか。 大袈裟に言えばそこでは日本の国力が試されているのではないだろうか。 今後も一国民として注視していきたいと思う。
 

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