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Critique, Design

格好いいFAXを探し求めた挙句またしても玉砕した男の独白

 もう既に12、3年ぐらいになるだろうか。 自宅に置くのに恥ずかしくないデザインのFAXを探し求める旅に出て・・・。 旅はまだ終わらない。 終わる気配もない。 実は10年以上前にも今回と同じ内容のエントリーを残しているが、状況はその時と何ら変わっていない。
 今の仕事を始めた時に必要に迫られて購入した1台のFAX。 旅先で偶然見つけた今の取引先にワープロでビジネス文書を書いてFAXを送信。 まだ事務所も倉庫もない頃、輸入した商品は全部自宅のリビングに在庫した。 何か新しい仕事を始める時なんてみんなそんなものだろうけど、思い返せばよくそんなことをやったものだと思う。
 今では前世紀の遺物となったそのFAXが未だに僕の目の前にある。 長年の仕事の相棒であった彼も最近は電子メールの台頭ですっかり出番が減ってしまった。 このまま完全にお役御免になるかと思いきや、世の中は暗黙のうちに電子メールで事足りるような性質のものと、FAXのように紙媒体に一度内容を定着させて証拠を保全するような性質のものとの住み分けができており、この一見時代遅れの機械は今でも働く機会を取り上げられたわけではない。 パソコンの普及でワープロが消え去ったのとは対照的だ。
 それでもさすがに送信する文書を読み取るスキャナーの部分が経年変化で劣化してしまったようで、試しに自宅のFAXから仕事場宛に送ったFAXの文書はノイズだらけでとても判読できる状態ではなくなっていた。 さすがにそろそろ新しい機器を購入しなければならない状況なのだ。
 しかしながら世の中には僕の審美眼にかなう家庭用FAXが依然として存在しない。 とはいえ、なにも僕は人様より美的基準がとりたてて厳しいわけではない。 現状は人様に、そして何よりも自らの所有欲にはばかることなく普通に置いておけるFAXがただのひとつもないだけなのだ。 その無残な状況が十数年もの間まったく改善されていないのだ。 機能偏重になるあまりデザインを忘れた家電をひたすら世に送り出し続けてきた日本の家電業界。 その没落のニュースを耳にするようになって久しいが、それはある意味で当然の帰結なのである。 ちなみにアメリカのアマゾンを覗いてみたら値段も手頃($89)でデザインも変じゃない普通のFAXがすぐに見つかった。 しかし日本でこうしたFAXを見つけることはまず不可能だ。 実は新たなFAX機器導入について急を要したのは自宅ではなく事務所の方だった。 この9月に事務所を移転したのを機に、死にかけていたブラザーのFAXとおさらばしようとしていたのだったが、マトモなFAXがない状況は同じ。 そこでここは事務所用と割り切って複合機を導入することにした。 見かけはほぼプリンターなので実質的には事務所からFAX機器が消えたに等しい状態。 求めている機能さえ満たされれば余計な機器は増えない方がいいに決まっている。 残るはやはり自宅のFAXの買い替えということになるのだが、考えた末こちらはもうしばらく我慢することにした。 仕事用ではないので使用頻度が著しく低いというのもあるが、それ以上に今市場に出回っている無残なデザインのFAXを目の前に置きたくないというその一念に尽きる。
 そこでこの際、自宅FAXの代わりに自宅の電話機を新調することにした。 これまではこの子機すらないFAX電話が我が家の唯一の電話機であり、僕の部屋にあるので他に部屋にいる時には不便だった。 そこでワイヤレスのものを探してみたが、これまた見事に無残なデザインばかりで辟易させられた。 ようやくどうにか許せるデザインのものを見つけたと思ったら価格が数万円・・・。 諦めかけたその時に見つけたのがこれ。 そもそも日本製はamadanaを筆頭に「デザイン家電だぞ! どうだ(#゚Д゚)ゴルァ!!」的なゴリ押しがその外観からほとばしっていて、それだけでもう気絶しそうになるから嫌なのだ。 その点これはモトローラ社製だし、普通に工業製品としてデザインされていて嫌味がない。 僕にとってこの違いはとても重要なのだ。 以前にもamadanaを批評したら粘着質のamadana信者から殺害予告された(当該コメントは警察に通報後に削除済み)ことがあったが、僕が好きなのは普通にデザインされた工業製品なのであって、他社のOEMで外観だけを取り繕った見てくれだけの厚化粧家電ではない。 彼我の差はとてつもなく大きく、そこには厳然とした哲学の有無があるのだ。

 留守番電話機能はついてないが、それに関しては不覚にも現役を続行することになった子機なしのオンボロFAXが引き続き担当してくれるので問題ない。 家庭内にある他のワイヤレス機器と干渉し合わないDECT方式(日本でこの方式を採用しているワイヤレス電話はまだ少ない)なので通話も非常にクリアで素晴らしい。 唯一の難点はアメリカからの並行輸入品なのでナンバーディスプレイが利用できないことぐらい。 価格は¥3,850。 悪くない買い物だったと思う。
 さて肝心のFAX探しについては徒労感と絶望感しかない。 もはや僕が生きている間に発売されることはないだろうとさえ思う。 もちろん僕もいつ死ぬかわからないし、FAXそのものが市場からなくなる日が来るかも知れない。 決して大袈裟ではなく、いま僕の目の前に広がっているのは絶望という名の大いなる闇だ。 デザインの無為無策という暗黒の闇だ。
 

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