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Critique

酒場放浪記と孤独のグルメ

 
 以前にも書いたが年末年始はこのうえなくテレビが退屈な時期である。 とりわけ地上波、それも年が明けてから始まる質より量で芸人集めて大騒ぎするだけの正月番組の類いにはただただ閉口するばかりである。 そんなこともあってテレビをつけている時はいつもの編成とさして変わらないBS放送を観ていた時間の方が長かった。
 大晦日に観ていたのは「酒場放浪記」。 年またぎ特番はもう3年目。 他があまりに面白くなかったのでずっと観ていた。 なんでもBS-TBSでは一番数字を持ってる番組らしい。 ワンカメラによるロケと超低予算ながら、魅力的なホストが居酒屋に行って酒を呑みながら肴を紹介するという単純な構成が視聴者の支持を得ているようだ。
 なにかといえば芸人を動員して過剰な演出をしては笑いを強要するような番組作りが横行する地上波。 テレビ局が芸能プロダクションと株を持ち合い、CM枠を埋めるために広告代理店が番組制作を主導し、視聴率至上主義が跋扈する世界。 それでもまだ深夜枠にはそうした縛りは少なく、しばしば可能性を感じさせる番組が現れることもある。 しかしながらそうした番組が一部で熱狂的な支持を得てゴールデンに進出した途端にそれまでのコアなファンは離れ、番組はいかにもゴールデン向けに変容し、その魅力の核心たる部分を失って見事なまでに陳腐化していく。 これまで幾度も繰り返されてきた光景である。


 昨年テレビ東京系でシーズン1、シーズン2と二度に渡って計24回放送された「孤独のグルメ」はそうした陳腐化とは無縁のようだ。 正月にシーズン1をぶっ続けで放送していたが、「酒場放浪記」同様、しょーもない番組が目白押しの年末年始にあってひときわ異彩を放っていた。 もっともこの再放送、もう少し早い時間帯にぶつけてみても良かったと思わないでもない。 午前3時過ぎからのオンエアはいくらなんでもあんまりだ。 ただでさえ就寝前に見ると寝付きが悪くなることこのうえない番組である。 深夜枠であり続けて欲しい番組には違いないが、それを見せられている視聴者の多くは空きっ腹の時間帯。 ある意味拷問に近い(笑)。
 「酒場放浪記」は吉田類の個人的な魅力によるところが大きい。 何処の酒場に行ってもひたすらに杯を重ね、肴をつまみ、ただただ旨い旨いと唸り、居合わせた常連と酒を酌み交わす。 何よりもまず知らない居酒屋の暖簾をくぐりその内部を垣間見られる喜び、「孤独のグルメ」の井之頭五郎同様そこで供される物すべてに寛容なホスト、番組全体を支配する「タモリ倶楽部」的ユルさ。 視聴者にまったく不快感を与えないことは長寿番組の必須条件だが、吉田類の肝臓がその健全性を失わない限りその地位は安泰だろう。
 このように「酒場放浪記」と「孤独のグルメ」はどこか同じ匂いのする番組だが、昨年12月の「孤独のグルメ」シーズン2の第9話においてこの両者が「共演」を果たしたことにも触れておきたい。 松重豊演じる井之頭五郎がレバカツを買い求めるシーンで、店の中で飲んでいる吉田類との寸劇があるのだ。 ただ下戸という設定になっている井之頭五郎だけに両者が酒盃を傾けるシーンはない。 残念ながら。

孤独のグルメ Season2 #9 – デイリーモーション動画

 とかく年末年始は報道特番みたいな番組が多く、出演者が「報道の歴史はテレビの歴史」とか「私はテレビが大好きです」なんて言葉を並べ、テレビ局自らがテレビを礼賛するような番組が多い。 そしてまたすべての在京キー局が系列の新聞社を抱えている関係上、冬の限界集落で雪深いなか新聞配達する老婆なんかを取材して「こういう人たちが新聞を支えている」と新聞の有難みをアピールすることにも余念がない。 こうした事象は裏を返せばテレビや新聞の権威が地に堕ちつつあることを如実に表している。
 何処かの国じゃないけど自画自賛ばっかりするようになったらオシマイである。
 

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