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神様、稲尾様 人様、牧田様

131004a ただでさえ出不精の僕が自宅から片道2時間かけて所沢の西武球場まで行くというのは相当な覚悟と重大な決意を要するものだが、「牧田和久をこの目で見たい!」という心の声、いや心の叫びに従い電車に乗った。 この日の時点でレギュラーシーズンも残り6試合。 クライマックスシリーズ(CS)進出を狙う西武としては是が非でも上位のソフトバンクを直接対決で叩いておきたいところである。
 試合は先発の牧田が好投。 同点で迎えた8回裏に栗山がファルケンボーグからライトスタンドに決勝ホームランを放ち、最後は涌井が締めて西武がこの天王山初戦をモノにした。 僕が観戦した時のライオンズの勝率は概ね高いが、大抵こうした投手戦によるクロスゲームになることがほとんどで、この夜もまさにそんな感じだった。
 CS進出を目指す両チームによる緊迫した好試合を演出したのは、何より西武の牧田とソフトバンクの寺原の両先発の好投。 とりわけ牧田の緩急自在のピッチングにはシビレた。 牧田は今や絶滅危惧種と言われて久しいサブマリン(アンダースロー)。 ロッテの渡辺俊介が全盛期を過ぎた今、名実ともに球界ナンバーワンのサブマリナーである。
131004b サブマリンはその存在自体が昭和の遺物といったイメージがある。 僕がライオンズを応援しに平和台球場に通い始めた頃にはパ・リーグの各球団に名うてのサブマリンが存在した。 阪急の足立光宏と山田久志、日本ハムの高橋直樹、南海の金城基泰、そしてロッテの仁科時成。 我がライオンズにもやや変則フォームでサイドハンド気味ではあるがサウスポーの永射保がいた。 まだスピードガンなど存在しない時代から後にテレビ中継のなかでもスピードガンによる球速表示が一般化していく過程で投手が球速偏重主義となるあまり徐々に生息数を減らしていったサブマリン。 テレビ中継がほとんどなかったことにも救われたのか、昭和40年代中頃から昭和の終わりまでのパ・リーグはサブマリナーにとって格好の生息地だった。
 ライオンズにも松沼博久という一時代を築いたサブマリンがいたが、昭和という時代が終わりを告げて間もなく引退した。 それからちょうど20年、ライオンズに彗星の如く現れたのが牧田和久だ。 一年目から先発に抑えにと大車輪の活躍で苦しい投手陣の屋台骨を支え、チームとしては松坂大輔以来の新人王を獲得、二年目は先発ローテーションに定着し13勝を挙げチームの大黒柱に成長。 今年は勝ち星に恵まれないながらも安定した投球をみせている。


 三塁側のベンチサイドからは牧田投手の美しい投球フォームを余すところなく堪能できた。 最初はただただその美しさに感動しっ放しで正直試合とかどうでもいいぐらいの心持ちだった。 ボールをセットしてからフォロースルーに至るまでの球持ちの長い一連の流麗な動き。 塁上に走者がいない時の(打者に考える隙を与えない)間髪入れない投球間隔の短さ。 対照的に一塁塁上に走者がいる時の(盗塁を許さない)間合いの長さと卓越した牽制技術とクイックモーション。 そして何よりも投じられるボールの緩急の差。 投手というポジションは野球という競技のなかで唯一自分が全てを支配することが可能な存在だが、そのことを自覚している投手が果たして球界にどれほどいるだろうか? そして牧田和久は間違いなくそれを自覚しその権利を行使できる能力を持つ数少ない投手のひとりだと思う。


 西武球場の一塁側屋根には西鉄ライオンズの伝説的投手「神様、仏様、稲尾様」こと故稲尾和久氏の現役時代の背番号24が、故人の生誕75周年にあたる昨年チームの永久欠番となったことを記念するプレートが掲げられていた。 稲尾氏は僕がライオンズファンになる直前にライオンズの監督を辞めていたので個人的には地元福岡の「RKBエキサイトナイター」の野球解説者としての印象が強い。 中継に耳を傾けスコアブックをつけながらライオンズを応援していた当時、ラジオから稲尾氏の解説が聴こえていたのを覚えている。
 現役時代に神様や仏様と並び称されるほどの大投手と同時代を生きた人たちは幸せだった。 そして稲尾氏のように鉄腕に例えられる剛性とは対極の柔性が真骨頂の牧田は現時点で優れた一人の投手でしかない。 だがそんな牧田和久の今後を見ることができる僕らも幸せだと思う。
 牧田が西武球場のマウンドに立ち続ける限り、その背中をもうひとりの「和久」が見守っている。
 

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