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Movie

私の男(ネタバレ)


 「海炭市叙景」以来、熊切和嘉監督をフォローしている。 同作品では函館を舞台に映画を撮った熊切監督は北海道出身。 今度は冬に流氷が接岸する紋別が主な舞台。 原作は直木賞をとった桜庭一樹の近親相姦もの。 海炭市叙景の時は原作を読んだが、今回はなんとなく活字を読む気にはならなかったのでいきなり映画で堪能することにした。 以下はそのあらすじ。

 
10歳で孤児となった少女・花。
彼女を引き取ることになった遠縁の男・淳悟。
孤独だったふたりは、北海道紋別の田舎町で寄り添うように暮らしていた。

6年後。
冬のオホーツク海、流氷の上で殺人事件が起こる。
暗い北の海から逃げるように出て行く淳悟と花は、互いに深い喪失と、ふたりだけの濃厚な秘密を抱えていた・・・。(公式サイトより抜粋)

 物語は流氷がぶつかりあった時に発する音から始まる。 その音は、初めて聴く者にとっては何か得体の知れない生き物が海の底から唸り声をあげているように感じるかも知れない。 その極寒の北の海からずぶ濡れの少女が流氷の上に這い上がってくる。 ふと、彼女は笑う。 最初から観る者を情緒不安定に陥れる映画である。 
 北海道南西沖地震による奥尻島への津波の到来により両親を失った花(二階堂ふみ)と、やはり幼い頃に家族を失った淳悟(浅野忠信)。 親子となったふたりはいつしかそのぞれの心の欠損部分を埋めるように互いを求め合うようになる。 血の雨が降り注ぐなかで愛を交歓するシーンはふたりの体を流れる断ち難い血の表象だと思われるが、唐突感は否めず評価が分かれるかも知れない。
 藤竜也演じる町の顔役・大塩。 画面に少しでも彼が映っている時だけ僕は情緒不安定から解放された。 大塩の存在は我々の社会そのもの。 花も淳悟もそれぞれ独善的な世界観の持ち主だけに、彼らだけのシーンは観ていてどうも落ち着かないのだ。
 流氷の上で花と大塩が対峙するシーンは圧巻だ。 大小さまざまな大きさの流氷の上を飛び石のように逃げる花と、それを追う大塩。 不安定な流氷の上という舞台設定がこの抜き差しならないシーンの危うさを助長する。 そして花は秘密を知られた大塩を流氷の上に置き去りにしてこの社会との接続を断ち、淳悟と逃げるように紋別を後にする・・・

 アムール川にその源を一にする流氷はオホーツク海を南下して紋別沿岸に流れ着く。 そこで互いの体をギシギシとぶつけ合って鳴く。 存在ゆえの苦しみの果ての嗚咽、或いはただひたすらに快楽を貪る喜悦。 ECMのスティーブ・キューンの一連の録音を思わせるようなジム・オルークの音楽が映像美と見事にシンクロし、観る者の心象に響き、そして時に激しく動揺させる。
 ところでこの作品の海外向けに製作された予告編が国内向けのそれよりも出来が良かったので紹介したい。 必要上やや説明的すぎる国内向けの予告編よりも音楽と映像中心の海外向けの方が断然いい。


 36回モスクワ国際映画祭最優秀作品賞、最優秀男優賞(浅野忠信)受賞。 敢えて良いか悪いかという基準では評価したくない。 好きか嫌いかと問われれば、嫌いな作品だ。 ★★★
 
映画『私の男』公式サイト
海炭市叙景 | Noisy Majority

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