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蹴球狂の詩

等々力エクスペリメント

新装なった等々力競技場のメインスタンドの外観はどこかミッドセンチュリーな宇宙船のようだ

新装なった等々力競技場のメインスタンドの外観はどこかミッドセンチュリーな宇宙船のようだ

スタンドは皇后杯過去最多2万人超の観客で埋め尽くされた

スタンドは皇后杯過去最多2万人超の観客で埋め尽くされた

 今年の皇后杯決勝は等々力陸上競技場で行われる。多摩川を挟んで東京側の旧巨人軍多摩川グラウンドのあたりはいつも自宅からジョギングで走っているところ。駒沢陸上競技場の次に自宅から近いサッカースタジアムである。そんな場所で澤穂希選手の現役最後の試合が行われるということで観に行った。
 等々力競技場は今年の春にメインスタンドが改修されて綺麗になっていた。バックスタンドも2018年以降に改修されるそうで、これは非常に楽しみである。そのスタンドは澤選手のラストマッチということもあり皇后杯史上過去最多の2万人を超える観衆で埋め尽くされた。
試合開始直後のコーナーキックで果敢にゴールを狙う澤選手

試合開始直後のコーナーキックで果敢にゴールを狙う澤選手

 サポーターの数ではアルビレックス新潟レディースがINAC神戸レオネッサを圧倒していたが試合内容は互角。1点を争うゲームはスコアレスのまま後半へ突入。ただ試合巧者の神戸がコーナーキックの獲得数で前半から新潟を圧倒し、セットプレーが勝敗を分けそうな匂いが漂い始める。
後半33分、決勝ゴールとなった澤選手のヘディングシュートが放たれた瞬間

後半33分、決勝ゴールとなった澤選手のヘディングシュートが放たれた瞬間

 後半33分、前半からコーナーキックのたびにゴール前に果敢な飛び込みを見せていた澤が川澄のコーナーキックをファーサイドで頭で合わせた。彼女の結婚後最初で現役最後のゴールはチームを皇后杯制覇に導く決勝点となった。それはボランチとして相手の攻撃の芽を摘み、攻撃のスイッチを入れるという地味ながら重要な役割に徹してきた澤になんとか得点を取らせたいとコーナーキックの機会を量産してお膳立てしたチームメイトと、最後まで貪欲にゴールを狙った澤自身の意志が結実した必然だったのだろう。元々はストライカーだった彼女がコーナーキックの時に見せる嗅覚や比類なき得点感覚はワールドカップやオリンピックをはじめ幾多の試合でゴールネットを揺らしてきた。年齢とともにポジションを下げた澤選手だったが、彼女のコーナーキックからのゴールの鮮烈な記憶はむしろその選手生活の後半に集中している。
151228c パイオニアとして日本の女子サッカーを苦難の時代から長く支えてきた一人の選手に用意された最高のはなむけ。それはあまりに出来過ぎたシナリオではあったが、人は生きているとたまにこうした場面に出くわすことがある。なにか超自然的な、大きな不可視的な力が働いた結果、人々が思い描くイメージが突然現実化する。もちろん予断に過ぎないが、対戦相手のサポーターはおろか選手ですら澤選手が決勝ゴールを決めるイメージを描いていた人がいたのではないか?だがこれでは新潟のサポーターや選手に失礼である。言い方を変えれば、そのイメージを完全に捨て切れてはいなかったのではないか?と思うのである。
 メインスタンドで僕の周りにいた観客は誰一人として澤選手のゴールの時にも立ち上がって拍手喝采を送って祝福するようなこともなく、ただあらかじめ予想されていた結末を静かに見守っていたような不思議な空気に支配されていた。その瞬間、思わず腰を浮かしそうになった僕もその雰囲気に気圧されて自重せざるをえなかった。なぜか誰もがその出来事を当然のこととして受け容れていた。それはまるで既に見たゴールシーンのリプレイ映像をあらためて確認しているかのようだった。
 2015年12月27日の午後、等々力競技場に発生していた強烈な磁場は、澤選手のシュートをゴールネットに引き寄せ、ロスタイムに味方のクロスに反応しゴール前に走り込んできた上尾野辺選手のシュートを枠の外に追いやった。個人的にはそんな馬鹿げた結びにしたいと思う。お伽話のような日曜の午後だった。
 

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